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Goods Column, 23


私の30万円までの腕時計選び

ある理由から、ちょっとよい腕時計を手に入れようと思い立った。いずれは息子に譲ってやれるような、そしてその時にウンチクを語ってやれるようなやつを。いろいろ候補はあるけれど、長く使うことが何よりの条件なので、ハード的、そしてソフト的に耐久性があることが必要だ。ハード的にというのは、丈夫で壊れにくいということだからわかりやすい。ソフト的にというのは、まず飽きのこないデザイン。そして将来的に対外価値が変わらないこと。簡単に言うと有名ブランド品だ。だからおのずと高価になってしまうけれど、予算という現実もある。とりあえず、一般庶民の私の限度額は30万円。各メーカーからいろいろなモデルがラインナップされ、雑誌でもよく特集されるボリューム・ゾーンだ。

まっさきに思いついたのは、オメガ・スピードマスター。人類初の月面着陸時に携行されていたという、この時計のエピソードはいうまでもない。ひとくちにスピードマスターといっても多くのバリエーションがあり、理想は私の生まれた頃に製造されたリュウズガードなしのサード・モデル、といいたいところだけれど、よいコンディションのものはめったにないので、まずは現行品の中から選んでみる。定番中の定番、手巻きのスピードマスター・プロフェッショナルは、なんといっても完成されたデザインにつきる。そして月面着陸時モデルの正統な継承機でもあり、それは裏蓋に刻まれた "THE FIRST WATCH WORN ON THE MOON"の文字が証明している。しかしいかんせんメジャーすぎるため、ちょっとハズして、ファースト・モデルの復刻版という手もある。ステンレス・スチールのベゼルや、アップライトのΩマーク、そしてアローハンドなどのディテールは私好み。これに昔風の3連ブレスをつければ、相当イケそうだ。

スティーヴ・マックィーンの大ファンの私としては、映画「ル・マン」で彼がつけていたホイヤー・モナコも外せない。現在は復刻版がカタログ・モデルとしてラインナップされているけれど、私の好みは初期の限定復刻版(注1)の、2カウンターにTAGなしロゴのモデル。ダイヤルの色は黒で、マックィーン・オリジナルの明るいブルーとはまた違った渋さがある。もうひとつホイヤーで気になったのは、キリウム・フォーミュラ1というアナログとデジタルのハイブリッド・モデル。これは見た目がとてもクール。どちらかというとハイテク系の時計はあまり興味がないのだけれど、ホイヤーは昔からクロノスプリットなどのかっこいいデジタル・モデルがあるし、モーターレース・シーンをダイレクトに連想させるネーミングもホイヤーらしい。クォーツというのも楽チンだ。

Rolex GMT-Master
あとはライアルの作品にも登場したブライトリングの、ナビタイマーもいいなあ。と、ここまであげたのはいずれもサイズの大きなクロノグラフ。はたしてこれらの時計を実際に試着してみたところ、私の細い腕にはどうにも似合わないのだった。だいたい過去の経験上、クロノグラフのストップウォッチを普段使うことはほとんどないこともわかっている。もっとシンプルで、なおかつイバリも効くようなやつ、ということでたどりついたのが、ちょっと古いロレックス。じつはその敷居の高いイメージから、ロレックスはあえて敬遠していた。しかし1960年から70年代あたりの特にスポーツモデルは、ギラギラしたところがなく質実剛健な感じでカッコイイ。中でも昔からずっと欲しかったのは、Ref.1016(注2)のエクスプローラー。もっともこれはかなり予算オーバー。あと好きなのはRef.1675のGMTマスター。アキュトロン・アストロノートを手にしてから、私はこの第4の針を持つGMTのスタイルがとても気に入っている。しかもエクスプローラーや、ほぼ同デザインのサブマリーナなどに比べると不人気で相場価格が安いのもありがたい。

しかしRef.1675の場合、どこでどうやって購入するかが問題となる。もちろん新品ではないため、そこらの量販店では売っていない。ネットオークションという手もあるけれど、なにしろ偽モノの多いロレックス、実物を見ないと心配だ。それにeBayをチェックしてみると、海外でも価格はあまり変わらない(そういうマーケット事情もやはりロレックスである)。結局、あちこちのショップをしばらく探し歩くしかなかった。そしてある日、全国の有名ショップが一堂に会して開催されたアンティーク・ウォッチ・フェアで、1970年製のRef.1675を見つけた。ダイヤルと風防がオリジナルのデッド・ストック品に交換されたばかりで(注3)、見た目のコンディションがすごくよい。それから私の絶対条件だったブラック・ベゼル。あとはリベット・ブレスというのもうれしい。実際につけてみると、以前試着したことのある現行のGMTマスター(II)に比べるとケースが薄いせいか、思ったよりもフィット感がよい。価格もなんとか予算内、、、。ちょっと悩んだけれど、これに決めた。

それからというもの、ほとんど毎日これをつけている。自動巻きでカレンダーつきのため、一度止まると日付を直すのが面倒(注4)というのもあるけれど、なかなか他の時計をする気になれないのだ。精度面も1日にプラス5秒程度で、30年以上前の機械ということを考えると大満足である。ところで、GMTマスターの最大の特徴ともいえる赤い24時間針。これがよく目立つだけに、分針に重なって隠されると表情が一変する。そう、まるでサブマリーナのように見えるのだ。この約1時間に1回のささやかな楽しみのために、私は今日もまた何度も時計を覗きこんでしまうのである。[2004/2/14]

注1: 1998年5月に限定5000本で発売された。現在ではちょっと入手困難かも。
注2: エクスプローラーには、Ref.1016より一回り小さいケースで値段も安いリダンものの Ref.5500もあるけれど、ここまで大きいモデルばかり考えていたので逆にちょっと小さすぎた。以前はこっちのほうが好きだったのに、我ながら勝手なものである(笑)。
注3: 交換は日本ロレックスで行われ、その作業伝票(いわゆる本モノの証明書とされる)がついていたというのもポイントだった。
注4: 私のRef.1675はカレンダーのクィックチェンジ機能のない Cal.1575ムーブメントを搭載。

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