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Mono Guide, "The Conduct of Major Maxim" / 「モノ」解説〜「マクシム少佐の指揮」


シリーズ第2作ということで、登場人物の性格や趣味が少しずつ明らかになってきた。例えばマクシムの好きな音楽や、アグネスのファッション・センスなどが伺われ、そこにはやはり「モノ」が一役かっている。また前作同様、車や武器類は際立って特徴的なものはないものの、それが却ってストーリーにリアルさを加えている。[2003/5/1]

※文中の引用(太字)は全て、早川書房刊「マクシム少佐の指揮」(菊池光訳、ハヤカワミステリ文庫)より。

【名称】ブランズウィック
【分類】レコード

茶を一杯と小さなソーセージ・ロールを一つ買うとひょっとしたら初期のデューク・エリントンを録音したブランズウィックの黒ラベルはないかと、古いSP盤の山を一枚一枚見ていった。(P16)

マクシムはジャズ、とりわけこのデューク・エリントンに代表されるビッグバンド系をよく聴くようだ。意外な一面だが、実はこのマクシム・シリーズの後の作品「砂漠の標的」にもカウント・ベイシーが登場し、重要なファクターになっている。なおブランズウィック(Brunswick)はアメリカの由緒あるレーベル(ただし、後にイギリスのDECCAに買収される)で、エリントンの初期から最盛期の作品のSP盤が多くリリースされている。


【名称】フォルクスワーゲン・ポロ
【分類】自動車

「わたしはここにいるわ、駅の外に、明日、6時に。ブルーのフォルクスワーゲン・ポロに乗って。いいわね?」(P32)

本作のキーマン=ロニイ・ブラッグ伍長に接触した情報員、ミセズ・ハワードの台詞。ポロは1975年デビューで(前年にゴルフとシロッコが出ている)、当時のVWのエントリーモデルだった(現在ではさらに小さいモデル、ルポがある)。情報員らしく目立たない車を選んだということだろう。


【名称】スペイン製の.38口径
【分類】

銃は、彼がだいたい予想していたようなリヴォルヴァだった。.38口径のコルトとほとんどそっくりのスペイン製で、引き金がかたい。(P34)

ブラッグがミセズ・ハワードから渡された銃。スペインには、アストラ(ASTRA)やスター(STAR)、ラーマ(LLAMA)のような、コルトやS&Wをベースにした銃が多く、モデルはちょっと特定できず。


【名称】リー・メトフォード Mk.I
【分類】

まるで南アフリカ戦争時の長いリー・メットフォード銃を掛けるために造られたような銃架だった。(P43)

マクシムのかつての部下、カズウェル軍曹が指導する少年軍事教練隊の銃保管庫にて。リー・メトフォード Mk.Iは19世紀からずっとイギリス軍兵士に使用されていたライフル。


【名称】ニコン F3
【分類】カメラ

「ニコンをぶらさげた尻の大きな観光客が、今年は異常繁殖しているようだな。表にばいきんのようにうようよいる。カメラをもっていないやつすら、一人見かけたよ」
「ほんとに?ヒースロゥ空港の入国管理カウンターを通れたのが不思議だな。カメラなしで入国するのは、不法移住の動かぬ証拠だよ」
(P47)

ジョージ・ハービンガーと、彼と同じ首相補佐官の仲間であるジェレミィとの会話。1959年に発表された一眼レフ「ニコンF」が世界中のプロ・カメラマン達に絶賛され、いまやニコンは世界のトップに君臨するカメラ・ブランドとなったと言っても過言ではないだろう(本作でもカメラの代名詞的に使われているのがその証)。ここでは参考までに、本作の発表のすぐ前=1980年に発売されたニコンF3を紹介。


【名称】ホンダ CB400N / ヤマハ XS500
【分類】オートバイ

まず、最初に見つかったオートバイ屋に当たってみた。陸軍で知り合ったロニイ・ブラッグを捜している。ホンダ400Nに乗っていたが、彼の友人の話では、今は二年前の型の銀色のヤマハXS500に乗っているらしい。(P82)

ホンダ400Nは、「ヨンフォア」こと名車CB400Fourの後継車、CB400Nのことだろう。原付に乗っていた高校時代、友人がヨンフォアに乗っていて(正確にはその友人の兄上が所有していた)、うらやましかったなあ。私はその後オートバイへの興味が薄れ、今ではどんな車種があるのか殆どわからない。しかしCB400NにしてもXS500にしても、もっとも「単車らしい」形のモデルで、憧れだった頃を懐かしく思い出す。


【名称】Dr.マーチン
【分類】

黒の革ジャケット、太いドック・マートン・ブーツにジーンズ。ロザーハイスの若者の90パーセントの服装で、同じ身なりの女の子もかなりいるはずだ。(P98)

ブラッグのやや頼りない友人、デイヴ・タナーが履いていたドック・マートン=Dr.マーチンは、エアクッション・ソールで有名な、私も愛用の靴のブランド。


【名称】ボーム&メルシエ・リヴィエラ
【分類】時計

金曜日の朝、アグネス・アルガーは、いつもと違ってとくに念入りに身なりを整えた。 ≪中略≫ ヴィクトリア朝初期の細い金鎖を首にかけ、あっさりした金の台に付けかえさせたファイア・オパールの指輪を右手にはめ、ボーム・アンド・メルシアの金時計を左手首につけている。(P110)

"H・R・マクシム少佐の行動に関する検討"という議題の会議に備えた、アグネスの身支度の様子。アグネスはやがてマクシムと親密な仲になっていくのだけれど、この時点ではまだ彼に会うためにめかしこんだわけではないようだ。ボーム&メルシエ(BAUME & MERCIER)は、スイスの1830年創業の老舗ブランドで、宝飾系腕時計ではずっと定評がある。有名すぎるカルティエなどに比べるとシブイ選択で、35歳という大人の女のセンスが感じられる。ちなみにどのモデルかまではさすがに特定できないので、ここでは1973年に発表された同社の定番品、リヴィエラを紹介。


【名称】T-72
【分類】戦車

少将がまたスコットランドのハイランド訛りで言った。「わしはどうもあの連中とは性が合わないのだ。 ≪中略≫ あの組織にはT-72型戦車と子供の三輪車の見分けがつく者は一人もいないようだな」(P127)

"H・R・マクシム少佐の行動に関する検討"の会議の場で、少将ブルース・ドルアリイがMI6を指して言った台詞。戦車を引き合いに出すあたり、軍人らしい皮肉。


【名称】シグ/ザウェル P230
【分類】

「拳銃について、なにかいってたか?」マクシムがきいた。ジョージが溜め息をついた。
「現場に二挺残っていた」アグネスが紙片をチラッと見た。「サウアー、7.65ミリ口径と9ミリ口径のショート、あるいは.380口径。それでわかる?」
マクシムがうなずいた。
(P169)

ロザーハイスの銃撃事件についての報告。これだけで即座に理解できるマクシムはさすがだと思う。私は最初、"ショート"というのが何の意味なのかさっぱりわからなかった(笑)。メーカー名では聞いたことがないし、まさか短銃身とかショートリコイルとか銃の特徴でもないだろうし。しかしよくよく文脈をたどって考えてみると、これは弾薬のサイズのことを言っているのだとわかった。つまり一般的な9ミリ・パラベラム/ルガー(9mm×19)ではなく、9ミリ・クルツ(9mm×17)か、.380ACPを使う銃ということだ。サウアーとはもちろんSAUERのことだろうから、7.65ミリ口径モデルもある SIG/SAUER P230あたりか。


【名称】フィアット・パンダ / ローヴァー2600
【分類】自動車

背後でパトカーが速度を上げたのが聞こえた。それも小型のパンダでなく、ローヴァー2600、"広域担当車"。事件捜索車だ。(P188)

パンダといえばジウジアーロ・デザインで有名なフィアット・パンダ、を連想するけれど、これはイギリスでいう都市部用の小型パトカーの総称の「パンダ」のことだろう。車種的には後述のメトロあたりが一般的。ちなみにいまだに街でよく見かけるフィアット・パンダは1979年のデビュー以来ずっと現役であり続けたが、ついに2003年5月31日をもって生産中止となるらしい。残念だ。対照的に今では全くというほど見かけない(笑)、ローヴァー2600はフェラーリ・デイトナによく似たフロント・マスクを持つミドル・サルーン。


【名称】ミノックス B
【分類】カメラ

ミノックス"スパイ"カメラ用の特殊サイズのフィルムで、スパイが現実にミノックスを使っているのにマクシムは驚いた。(P247)

スパイ・カメラの代名詞、ミノックス(MINOX)。でも秘密最優先のスパイの使う道具がこんなに有名なのは、いかがなものか(笑)。ひとくちにミノックスといっても何タイプかあるのだが、ここではもっとも出来がよいとされている ミノックス Bを紹介。


【名称】アウディ100
【分類】自動車

彼はすぐさま仕事の話に入った、「書類をすべて手に入れたと聞きましたが?けっこう。30分後に寺院の外の駐車場へきてくれませんか?わたしはブルーのアウディ100で通りかかる。それでいいですか?」(P260)

MI6のディーター・シムズが乗るアウディ100は、当時のアウディのフラッグシップ。年代的には、1976年デビューの2代目モデルと思われる。


【名称】マーチン B-26 マローダー
【分類】航空機

「一発の爆弾だけではなくて、爆撃機全体だったのだ。アメリカのB-26だ。どんな故障を起こしたのか知らないが、教会の裏に墜落した時は、まだ爆弾を全部抱えていたのだ」(P286)

B-26は第2次大戦後期の高速爆撃機。着陸時の事故の多さから"The WidowMaker"=「未亡人製造機」とも呼ばれ、本作のこのエピソードを象徴している。


【名称】ミラ・ショーン
【分類】パイプ

ショルツが濃いオレンジ色に変色したミヤショームのパイプを取り出して吹いて、通り具合を見た。(P287)

ミヤショーム、、、これはおそらく喫煙具もつくっているイタリアの有名ブランド、ミラ・ショーン(MILA SCHON)のことだろうか。それはともかく、私がパイプと聞いて思い出す人といえば、開高健だ。もともとは敗戦後の窮乏から、吸殻をほぐしてパイプに詰め込んで吸いはじめたとのことだが、後年の氏のトレードマークのひとつになった。ちなみに氏はパイプを「哲人の夜の虚具」と称しているが、そこらへんの詳しいところは氏のエッセイ集「生物(いきもの)としての静物」(集英社文庫)をお読み頂きたく。

※訂正 [2003/5/12]
ミヤショームとは "MEERSCHAUM" のことでした。通常は「メシャム」と表記されるようです。メシャムは海泡石という、多孔性鉱物の一種で、柔らかく加工がし易いうえ、文中にもあるように使い込むにつれ乳白色から琥珀色へと色が変化する楽しみがあり、「パイプの女王」と称されるとのこと。


【名称】コルン
【分類】

宿で飲んだコルンのせいで、ひたいを鉄の手袋で握りしめられているような気がし、 ≪中略≫ 頭痛を少しでも和らげようとしているところへ、シムズが隣の椅子に座った。(P296)

コルンは小麦等からつくられるドイツ特産の蒸留酒で「穀物」を意味する。オルデスローエ等の銘柄が有名。


【名称】ルノー 16
【分類】自動車

「車、みつけてくれたか?」マクシムがきいた。
「見つけましたよ...ルノー16TX」
 ≪中略≫ リフトにのっているルノーは、濃緑で、数年前のモデルだった−−事実、もう何年も生産されていない−−が、かなり清潔でへこみなどないように見えた。(P353)

ルノー16は、ヨーロッパのCOTYにも選ばれたほどの優れた実用車だ。そういえば自動車評論家の大川悠氏が「この1台」に選んだのもルノー16だった。


【名称】オースチン メトロ
【分類】自動車

「車が一台出て行った、緑のメトロ。まわりに人は見当たらない」(P376)

メトロは当時のイギリスを代表する、新世代の小型車。MGメトロ6R4という、400馬力オーバー(!)のエンジンをミッドシップに積んだ、グループB時代のラリー用スペシャルモデルが有名。


【名称】セスカ・ゾブロヨフカ Vz50
【分類】

「やめろ、ロン」マクシムが命じた。その男−−S2−−は武器をもってすらいなかった。S3はチェコ製のVZ50自動拳銃をポケットに入れていた。(P396)

チェコ製の、ということなのでセスカ・ゾブロヨフカ Vz50のことだと思われる。文中には"VZ50"とあるが、この"VZ"はチェコ語で「モデル」を意味する"Vzor"の略で、通常は単にCZ50と呼ばれる。


【名称】スターリング L2A1
【分類】

マクシムが消音装置つきの軽機関銃を手にとった−−やはり9ミリ口径のパチェット・スターリングだった。(P399)

これは、イギリス軍制式SMGのスターリング L2A1のことだろう。パチェットとはこの銃の設計者の名前で、兵士達にはこちらの方が通り名となっていたようだ。


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