以前から街で見かけては、そのエキセントリックな形と、「シトロエン」というブランドで気になっていたBX。そんな1991年の6月のある日、ユーノスからダイレクトメールが届いた。「BX 16TZi新登場。超低金利。」とのこと。16TZiは新しいBXの最廉価モデルで、それまで最も安かった1900ccモデルに比べ、排気量は1600ccでエンジンパワーはダウンしたものの、フル装備のままで価格は約50万円も安いという、魅力あふれるものだった。当時の自動車雑誌で16TZiの記事を見かけることも多く、急速にBXが欲しくなる。しかし半年前に別の車を買ったばかりでローンの支払い真っ最中の私には、たとえ廉価モデルでもBXなんて高嶺の花。でもまあタダでコーヒーでも飲んでくるかと、ひやかし気分でユーノスに見に行った。 「みぞおちの奥で何かがカチッと一段落ちるのを感じた」とはスーザンと初対面のスペンサー(© R.B.パーカー)。はじめてBXに試乗したとき、まさにそんな気がした。わずか数十メートル走っただけなのに、シートの座り心地、ステアの感触、エンジン音、すべてが自分の感性に合うと思った。そしてハイドロならではの乗り心地、ストロークのないブレーキ、止まっているとピョコピョコする独特な挙動。そういった新鮮な驚きもあいまって、朝のひやかし気分はどこかにとんだ。 試乗車の16TZiから降りて、そこから少し離れたところにある中古の19TRiが目に入った。中古といっても走行距離1000kmに満たないという、ほとんど新車のようなその19TRiに座ってみる。さすがに室内はほとんどヤレていない。もともとTRiのディテール(マイチェンでTRi→TZiになった)が好きだった自分。さらにボディカラーは欲しいと思っていた白。値段も新車に比べるとずいぶん安い。ムラムラと購買意欲が盛り上がる。でも先立つものは?今の車のローンだってたっぷり残っているのだ。いや、そんなのどうにかなる。そう、これを買うのだ。 こうしてBXとのつきあいが始まったのでした。[1998/2/12]
| |||
|