" ...or because I was Caneton? "
ギャビン・ライアルの代表作「深夜プラス1」のクライマックスシーン。主人公カントンことルイス・ケインが、請けた仕事は簡単なはずだった。しかし彼は今、愛銃モーゼルを片手に、敵の待つ塹壕跡を辿り歩いている。命の危険を冒してまで、この仕事にこだわるのはなぜか。報酬?正義感?センチメンタリズム?
ライアルが描く男たちのこだわりの理由、その答がこの科白にある。
ライアルのこだわりは人間だけにとどまらない。カントンが使うモーゼル、シトロエンDSといった一癖も二癖もある「モノ」(物)たち。この「モノ」がストーリーにリアリティを加える。そして登場人物の生々しい姿を我々に伝えてくれる。例えば、カントンがモーゼルM1932ではなくコルト.45を使っていたらどうか。シトロエンDSではなくフィアットを選んでいたら?カントンのプロとしての経験とセンス、そして愚直なまでに己のルールにこだわる性格を、ここまで深く知ることはできなかったのではないか。
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ここでは、そんなライアル作品に登場する「モノ」の解説や、ライアルの邦訳全作品のあらすじなどを紹介。少しでも参考になれば、と思います。
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